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検察官による取り調べを特別公務員暴行陵虐罪に問う裁判が10日、大阪地裁で始まった。検察改革が叫ばれる中でも検察官の取り調べが不適正とされる事例は相次いでいる。付審判制度で元大阪地検特捜部検事の田渕大輔被告(54)が裁かれることについて、法曹関係者には「裁判所の〝検察離れ〟を象徴している」と見る向きがある。一方、今回は取り調べ中の「言葉」が罪に問われた初のケースであり、検察関係者からは審理の行方が今後の捜査に及ぼす影響を危惧する声が上がる。
「かつての裁判所は検察の言いなりといわれても仕方がない状況だった」。ある裁判官OBはこう打ち明ける。密室で厳しい取り調べが行われていることは半ば公然の秘密であり、裁判所はそれを「やむなし」とした上で検察が作成した供述調書を信用し、有罪判決を出してきた。「有罪・無罪を決めているのは検察ではないか」と裁判所が揶揄(やゆ)されることもあったが、検察とともに治安維持を担うという意識すらあったという。
だが、そんな信頼が揺らぐ決定打となったのが、平成22年に発覚した大阪地検特捜部の証拠改竄(かいざん)事件である。事件の見立てに固執して関係者の虚偽供述を見破れず、逆に供述に合わない客観証拠に手を加え、冤罪(えんざい)を生むという暴挙だった。
信頼回復を期す検察が供述調書の任意性や信用性を担保するために23年に試行を始めたのが、検察の独自捜査事件での取り調べの録音・録画(可視化)である。令和元年からは、同事件や裁判員裁判対象事件で逮捕・勾留された容疑者の全過程での可視化が義務付けられ、検察は可視化の範囲をそれ以外の取り調べへと自主的に拡大してきた。
ただ、供述調書への信頼を高めようとしたこうした取り組みは、むしろ裁判所の「調書離れ」につながった。供述調書を証拠採用せず、録音・録画映像を含む客観証拠や公判での供述を重視するという流れが強まり、検察から独立して判断を下すという裁判所本来の姿は、一般市民が参加する裁判員裁判制度の中でより強固となった。